信頼・トラブル回避

遺品の出張買取で起きる押し買いトラブルと訪問購入のクーリングオフ

遺品の出張買取で起きる押し買いの手口と、特定商取引法の訪問購入のルールをまとめました。書面の確認、8日間のクーリングオフ、品物の引き渡しを断る方法、相談先を手順で説明します。

しまいごとノート編集部
自宅の座卓に置かれた形見の指輪と着物、その横にある買取契約の書面
目次
  1. 遺品の出張買取で起きている押し買いの手口
  2. 訪問購入で業者が守らなければならないルール
  3. 業者を家に入れる前と、査定の場で確かめる順番
  4. 書面を受け取った日から8日間のクーリングオフ
  5. 品物の引き渡しを断れる期間と、持ち出された後の動き方
  6. 相談先と、遺品を売る前に家族で決めておくこと
  7. まとめ

遺品の出張買取で起きている押し買いの手口

親の家を片付けている時期に「不用品を買い取ります」という電話やチラシが届き、そこから押し買いの被害に至った相談を、国民生活センターは繰り返し公表しています。よくある流れは、古い衣類や食器を見るという名目で家に上がり、査定の途中から「貴金属やアクセサリーはありませんか」と話を広げていくものです。指輪を出すまで帰らない。相場の説明をせず数千円を置いて持ち去る。契約書を渡さない。相談にはこうした行為が並びます。

狙われやすいのは、高齢の一人暮らしの家や、遺品整理で貴金属・着物・切手・古銭がまとめて出てきた家です。形見の指輪は重さと純度で値段が決まるため、見た目では持ち主にも価値がわかりません。押し買いに共通するのは、その場で売ると決めさせ、品物をすぐ持ち帰るという進め方です。この進め方を止めるために、特定商取引法の訪問購入のルールが2013年2月に施行されました。

訪問購入で業者が守らなければならないルール

業者が自宅など営業所以外の場所で消費者から物品を買い取る取引を、特定商取引法では訪問購入と呼びます。消費者庁の特定商取引法ガイドが示している主な義務は次のとおりです。

  • 勧誘の前に、業者名、買取の勧誘に来たこと、買い取りたい物品の種類を伝える
  • 依頼していない人の家を訪ねて勧誘しない。査定を頼まれた品物以外も勧誘してはいけない
  • 勧誘を受けるつもりがあるか先に確認し、断られたらそれ以上勧誘しない
  • 申込みや契約のときに、クーリングオフについて書いた書面を渡す
  • 嘘の説明をしない。脅して困らせない
  • クーリングオフ期間中は品物の引き渡しを断れると伝える

着物の査定を頼んだのに業者が貴金属の買取まで持ちかけた場合、頼んでいない品物への勧誘として、このルールに反する行為になります。一方で、品物の種類によっては訪問購入のルールが使えません。遺品整理で出てくるもので当てはめると、次の表のようになります。

訪問購入のルールの対象外になる品目遺品整理で出てきやすい例
自動車(二輪を除く)故人の乗用車
家電(持ち運びが簡単なものを除く)冷蔵庫、洗濯機
家具箪笥、食器棚
書籍蔵書、全集
有価証券株券などの証券
レコード、CD、DVD、ゲームソフト類レコードの収集品

貴金属、着物、切手、古銭、時計、ブランド品はルールの対象です。※2026年7月時点の目安です。最新の料金・制度は各社公式・自治体でご確認ください。

業者を家に入れる前と、査定の場で確かめる順番

自分から出張買取を頼む場合も、準備で防げることがあります。当日までの流れを順に並べます。

  1. 電話で依頼するとき、査定してほしい品目と数を伝える。「着物3点と帯2本」のように決めておくと、それ以外の勧誘に気づきやすい
  2. 訪問日には家族か知人に同席してもらう。遺品の場合は相続人の誰かが立ち会う
  3. 到着したら業者名と担当者名を確かめ、名刺をもらい、古物商の許可番号を控える
  4. 頼んでいない品物を見せるよう言われても、出さずに断る
  5. 金額に納得できないときは「売りません」と言葉ではっきり伝える
  6. 売ると決めたら、書面の中身を読んでから署名する

箪笥の引き出しを業者に開けさせないことも大事です。品物を探すのは家族がやり、業者には査定の対象だけを見せます。

読者の疑問

「売りません」と言っても業者が玄関から動かないとき、警察を呼んでいいのですか。

しまいごとノート編集部

帰るよう求めても居座る行為は、刑法の不退去罪にあたる可能性があります。身の危険を感じたら110番に通報してください。急ぎでなければ警察相談専用電話の#9110に相談できます。

書面を受け取った日から8日間のクーリングオフ

訪問購入で契約した場合、書面を受け取った日を1日目として8日以内なら、理由を問わず契約を解除できます。9月1日に書面を受け取ったなら、9月8日までに通知を出せば有効です。届いた日ではなく出した日で判断されるので、8日目に郵便局の窓口で出しても間に合います。

書面には、品物の種類と数、買取価格、代金の支払い時期と方法、品物の引き渡し時期などが書かれ、クーリングオフについては赤枠の中に赤字で書くことになっています。書面をもらっていない、または必要なことが書かれていない場合は、8日を過ぎてもクーリングオフできます。業者に嘘を言われたり脅されたりしてクーリングオフしなかった場合も、期間は延びます。

通知は、はがきなら次の内容を書きます。

  • 契約した日
  • 業者名と担当者名
  • 品物の名前と数、受け取った代金の額
  • 「上記の契約を解除します」という一文
  • 通知を書いた日、自分の住所と氏名

はがきは両面をコピーし、特定記録郵便か簡易書留で送って控えを保管します。2022年6月からは、メールや業者のウェブサイトの入力フォームでも通知できるようになりました。その場合は送った画面を保存しておきます。クーリングオフしたときは、受け取った代金を業者に返します。業者は損害賠償や違約金を請求できません。

品物の引き渡しを断れる期間と、持ち出された後の動き方

クーリングオフ期間中は、契約していても品物を業者に渡すのを断れます。業者はこの権利を消費者に伝えなければいけません。迷いがあるときは8日間は手元に置き、家族と相談してから渡すか決める方法があります。

期間中に業者が品物をほかの買取店などに渡したときは、相手の名前や引き渡した日を売った人に知らせる義務があります。渡した先にも、クーリングオフされる可能性があると知らせなければいけません。クーリングオフはこの転売先にも主張できますが、事情を知らず、知らないことに落ち度もない相手には主張できません。転売が進むほど取り戻すのは難しくなるので、日数が残っているうちに通知を出します。

読者の疑問

業者の名刺も書面もなく、連絡先がわからないまま母の指輪を持っていかれました。

しまいごとノート編集部

チラシ、着信履歴、車のナンバーのメモなど、業者につながる手がかりを集めて消費者ホットライン188に電話してください。書面がないためクーリングオフの期限は進んでおらず、消費生活センターが業者の特定や交渉について助言します。

相談先と、遺品を売る前に家族で決めておくこと

困ったら、消費者ホットライン188に電話します。近くの市区町村や都道府県の消費生活センターにつながり、クーリングオフの書き方や業者との交渉について相談できます。国民生活センターは訪問購入の相談事例を公表しているので、自分のケースに近い手口がないか先に読んでおく方法もあります。

遺品を売る場合は、売ってよいのが誰なのかを先に決めておきます。遺産分割が終わる前の形見は相続人全員のものです。一人の判断で売ると、後から親族ともめる原因になります。

先に確認すること

相続放棄を考えているなら、価値のある遺品を売る前に止まってください。相続財産を処分すると単純承認、つまり相続を受け入れたとみなされ、家庭裁判所で相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄は原則として、自分が相続人になったと知った日から3か月以内に申し立てます。

まとめ

遺品の出張買取での押し買いは、査定の名目で家に上がり、頼んでいない貴金属まで出させて、その場で持ち帰るという流れで起きています。特定商取引法の訪問購入のルールでは、業者に対して、訪問の目的を伝えること、頼まれていない品物の勧誘をしないこと、書面を渡すことが義務になっています。

自分を守る手順は、査定してほしい品目を決めて依頼する、家族と一緒に対応する、書面を読んでから署名する、の3つです。契約後に迷ったら、書面を受け取った日から8日以内にクーリングオフの通知を出し、その間は品物を渡さずに手元に置けます。家具・大型家電・書籍などはこのルールの対象外です。相続放棄を考えている家族は、売る前に手続きの順番を確かめてください。困ったときの相談先は消費者ホットライン188です。

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この記事を書いた人

しまいごとノート編集部

費用相場・手続き・業者選びの下調べ担当

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